アメリカでの初版が1979年(初出は医学専門誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』1976年12月号)という古い本だが、内容は今読んでも素晴らしく価値のあるもので、とにかく驚いた。
◆目次◆
第1章 私の膠原病回復記
第2章 神秘的なプラシーボ
第3章 想像力と長寿
第4章 痛みは究極の敵ではない
第5章 ホリスティック・ヘルスと治癒
第6章 三千人の医師から学んだこと
人間の治癒力(ルネ・デュボス)
訳者の言葉
解説(小林登)
著者はジャーナリストであり、医学の専門家ではない。
1964年に突然重い膠原病を発症し、専門医から「回復の可能性は500分の1」と宣告されてしまう。
著者は理解ある主治医の元で、仕事で得た知識をもとに独自の方法を選択、奇跡の回復を遂げた。
その体験を医学専門誌に発表したところ、医師から3千通を超える手紙が届くなど大きな反響があったという。第1章が雑誌に載った論文であり、2章以降はその後の経緯や著者の経験したことがまとめられている。
著者は重い病気にかかったことで初めて、いかに医療を取り巻く環境がひどいものかを痛感、その問題点を鋭く指摘している。
病院の都合による過度の検査や採血、機械任せで心のこもったケアはなかなか受けられない、副作用を無視した大量の投薬など。
病院に居れば治るものも治らない、と著者はホテルに移り、自然治癒力*2を最大限発揮させるために選んだ方法は2つ。
ひとつはタイトルにもあるように、「笑う」ことで自然治癒力のスイッチを入れること。笑える映画を見たり、本を読んでもらうことで主治医も驚くほどの回復を見せたという。
もうひとつは、ビタミンCの大量投与。静脈内への点滴(1回3~4時間かける)で、最終的には1日25グラムまで投与したそうだ。
ちなみに、この本ではライナス・ポーリング博士のビタミンCの研究のことにも言及しているが、著者がこの方法を選択したのはポーリング博士の研究結果が公表されるよりも前だ。
私が印象に残ったのは次の3つの点。
1.治療に対して、患者自身が責任を持って選択すること。
著者も最初は「医師にお任せ」だったそうだが、それでは治らない、と決意してから方針を変えた。
2.「治るのだ」と前向きに強く思うことで、自然治癒力が活性化できる、ということ。
3.プラシーボの大きな可能性
本当の治療とは「診察して投薬すること」ではない。
この本では「プラシーボ」(「偽薬」と訳されることが多いが、何の薬効もない薬と同じ形状のもの)がありとあらゆる病気に効果がある、という多くの症例が紹介されている。
もちろん、プラシーボが病気を治すには、医師との信頼関係が重要であり、本人にも治るという強い気持ちが必要だ。
薬には副作用があり、多剤投与でさらりリスクは増える。適切にプラシーボを使うことで、さまざまな問題が改善できるのでは、と期待が持てる。
病気との向き合い方について、高齢になってもなお精力的に活動していたシュヴァイツァー博士や、チェロ奏者カサルス氏とのエピソードも紹介されている。
いかにその人の創造性を発揮させるかで、生きるエネルギーの出方も変わってくるのだ。
私自身、なかなか健康が取り戻せず希望が持てない時もあったが、次の一説を読んで気持ちが弱かったかな、と少し反省した。
やはり信頼できて、自分の気持ちを理解してくれる医師や治療家の存在は大きい(私が治る、と思えるようになったのは、そういう出会いがあってからのことなので)。
病気はすべて克服できるとは限らない。しかし多くの人は必要以上に病気に負けて、生活をかき乱されすぎている。そこまで意気阻喪しなくてもいいいのに。そういう人たちは、本来不屈の態度を取れるだけの力を持っているのに、それを自分で無視したり、弱めたりしているのである。たとえ病気になっても、意味のある人生を送り、さらに進んでは多少の喜びすら味わって生きる余地はいつでも残っている。だから生活の質を、少なくとも治療と同等に大切にすることは可能なのだ(P155)。
続編『続・笑いと治癒力―生への意欲』もあるそうなので、読んでみたい。
「病は気から」を裏付ける、貴重な本。病気にならないため、なっても治るため、また、身内が病気になった時の備えとして、自分を守るためにぜひ読んでみてください。
私のアクション:続編を読む♪
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
生への意欲の一面である創造力は活発な脳のインパルスを生じさせて下垂体を刺激し、それによって松果体と全内分泌系に影響する作用を引き起こす(P28)
☆**患者のたくましい生への意欲がなくては、プラシーボが――どんな薬でもその点では同じだが――大きな効果を示せるかどうかは疑問だ(P31)。
どの患者も自分の中に自分自身の医者を持っている(P55)
「患者たちはその真実を知らずに私たち(医者)のところにやって来る。私たちがその各人の中に住んでいる石屋を首尾よく働かせることができたら、めでたしめでたし」(シュヴァイツァー博士の言葉)
プラシーボは、その各人の中に住んでいる医者なのだ。
カサルスの言葉(P67)
※パブロ・カザルス(チェロ奏者)→この本では「カサルス」表記
「無力感の問題に対する答はそう込み入ったものではない」
「各人は、必ずしも政治に飛び込まなくても、平和のために何かすることができます。人はみな自分の内部に根本的な道理の観念を持っています。その観念の告げることに耳を傾け、その通りに行動すれば、その人は世界が一番必要とすることを大きく果たしているのです。それは別に込み入ったことではないが、勇気が要ります。人が自分自身の善性に耳を傾け、それに従って行動するのには勇気が要ります。われわれは自分自身になりきる気があるかどうか。これが大切な問題です」
イギリスにおけるビタミンCの使い方(P146)
手術後の決まりとして、感染予防のために、抗生物質ではなくビタミンCの静脈内投与を行う方法だ。