毎日ゴキゲン♪の法則・スピ編

これからは「自分ファースト」で

医療は「メリット」「デメリット」を天秤にかけよう☆☆☆

絶対に、医者に殺されない47の心得
岩田 健太郎
講談社(2013/12/10)
¥1,100+税


※お断り
この記事では「医者」と「医師」が混在しています(一部「お医者さん」もあり)。
著者及び近藤誠氏の本のタイトルと引用では「医者」、私が自分で書いた部分は原則「医師」になっています。

個人的に「医者」と呼び捨てにするのはあまり好きではないので「医師」にしました。
読みにくいところもあると思いますが、ご了承ください。


家族が借りてきた本。著者のお名前を見ると、以前読んで衝撃を受け、時間術のバイブルと勝手に思っている『1秒もムダに生きない』の岩田先生ではないですか。

読んでみて感じたのは、非常に「クール」で「リアル」な*1医学論ということだった。


◆目次◆
第1章 病院・薬と上手につきあう基本
第2章 こんな薬を出す医者に気をつけろ
第3章 こんなタイプの医者に気をつけろ
第4章 医療情報のウソ・ホント
第5章 医者と患者の「おいしい」関係

パッと見、読みづらい。私は仕事の経験上、薬や医療系のリテラシーは少しあるので大丈夫だったが、借りて来た家族は「読みにくい」とこぼしていた。
その理由はあとがきに書いてある。

 本書では、あえて異なる二つの読み手を想定しました。一つは患者、もう一つは医療者(とくに医者)です。異なる二つの読み手に同じ言葉を発し、そこに込められた何重ものメッセージを、異なる受け取り方を「あえて」してもらうように、計算しました(以下略)(P215)。


患者に向けて書かれた本かと思ったが、実は医師に注意を促したり、簡易レファレンス的に使えるように書かれているので、薬の名前がいろいろと登場する。


また、近藤誠さんの『医者に殺されない47の心得』とそっくりなタイトルなのは、著者曰くパロディなのだそうだ。

本書は、「極論」を風刺的に捉えた「パロディ」です。その対象は、近藤誠氏の『医者に殺されない47の心得』と、内海聡氏の『医学不要論』です(P203)。


内海聡さんの本は読んだことがないのでわからないが、両者どちらもズバズバ断言して切って捨てる「極論の人」と著者は捉えているようで、それに一石投じたい、というのがこの本を書いた理由のようだ。

ただ、少し前に『医者に殺されない47の心得』を読んだので*2比較すると、近藤さんの本はがんのこと以外はそれほど極論はなかったように思う。半分は「養生論」みたいなものだったし。

きちんと患者に向けて書かれている印象で、実はこの本よりも印象はよかった。さすがは菊池寛賞を取っただけのことはあると思う。


ただ、この本はさすがに「クールでリアルな医学論」だけあり、淡々と何を捨てて何を取るべきか、優先順位をどう考えるべきかが展開されているので、病院選びや診察を受ける時の判断基準にはなると思う。


著者が考えるいい医師は以下の通り(私がまとめました。意訳あり)

    • すでに飲んでいる薬について言及した時に、うれしそうに反応する医師(患者さんから情報を得たいと思い、聞く耳を持っているから)。
    • 専門領域以外のことも診てもらえるか相談して、ある程度答を出してくれる(むずかしい場合は専門医につないでくれる)*3かかりつけ医。
    • 患者さんが飲んでいる薬やサプリメントなどで知らないものがあったら、質問したり調べたりできる医師*4
    • やたらと検査したがらない医師
    • 一流大学卒以外の医師(「質問が得意」な人よりも、質問に正確、迅速、大量に答えられる人の方が優等生であるため、医師に必要な資質である「問う力」が弱いことが多い。また、プライドの高さがマイナスになることも)

例として挙げられていたのが、高齢の患者が「夜眠れないんです」と言うと反射的に睡眠薬を出してしまうケース。実は、頻尿が原因で、それを改善すれば不眠もよくなる可能性があるという。質問力がない医師だと、こういうリスクがあるのだそうだ。

また、かかりつけ医に専門外の症状を話すことで、早く治癒できるかもしれないという。

 世の中には、頭痛、肩こり、目のかすみ、お腹の痛み、不眠……これらすべてを一人で診てくれる医者もたくさんいます。さらに言えば、じつはこれらの病根はつながっていて、検査なんて一つもせずに、一種類の薬だけで治せる場合だってある。
(中略)
自己診断で別の病院にいきなり行くより、うまくいく場合が多いでしょう。そして、さまざまな相談をしても、「それはですね」と答を出してくれることの多い医者を、かかりつけ医にすることをおすすめします(P27-28)。



一方で、医師側のジレンマなども書かれているし、長すぎる待ち時間の改善には患者側の協力も必要だ、とある。
この本を通して感じたのは、「医療は患者も含めたチーム体勢でやるのが望ましい」という著者の考え方だ。だからこそ、この本を患者も医師も両方読めるものにしようとしたのだと思う。医師から一方的に言われるのではなく、対等にテーブルについて話ができるのが理想と考えている。

 患者は医療の世界の一参加者です。「一参加者にすぎない」と規定すればラクになります。自己決定のプレッシャーに苦しむ必要も、自分の権利が十全に行使されているか、神経質にチェックする必要もなくなります(P212)。


近藤さんの本は、「医者の言うがままにさせたら大変なことになる、患者も知識を得て自衛しよう」という考え方だと思うので、そもそも姿勢が違うのだ。


どちらが好きかは人それぞれだと思うが、私がこの本に好感を持てたのは、ほぼすべての場面で“「メリット」と「デメリット」を明らかにし、ふたつを天秤にかけてよりよい方法を選ぶ”という点。

薬には必ず副作用があるし、何にでもいい面と悪い面がある。何を最優先させるか、何が得たいかをはっきりさせることで、答が見つかるという。

実際に大きな病気になった時にはなかなか冷静な判断ができないと思うが、これを知っているだけでも少し違うのではないだろうか。


専門的な話もたくさん出てくるので、医療にある程度興味のある人向けだと思いますが、一読の価値はあります。むずかしければ、太字の部分だけ拾い読みしてもいいかもしれません。
私のアクション:専門外と思っても、まずかかりつけ医に相談してみる

関連記事
読書日記:『医者に殺されない47の心得』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

「治りが悪いな」と心配になったら、別の病院ではなく、最初に診てもらった医者へもう一度行く(P19)

ある病気が治る途中にあるのか、治っていないかの判定は、「最初に診た」医者が、一番的確に判定できる。

医者の世界のリスクヘッジは分散ではなく集中(P28)

医者はなるべく一人、薬局は一つが理想。お薬手帳は絶対に一つにまとめる。

しかるべき段階を経たら治る病気を、あわてて治そうとしない(P44)

私だったら、風邪、軽い下痢、軽いあれやこれやで病院には行かず、自然に治るのを待つ。

健康診断で「異常」を指摘されても、実は放っておいてもよい人も多い(P121)

もっと気を楽に「検査は検査、大事なのは自分自身の健康で、両者は別物」と考えるのが賢明。

「正常値」ではなく「標準値」。100人が血液検査を受け、このうち95人に当てはまる範囲が「基準値」。5%は、たとえ健康な人の検査の値でも「異常」と判定される。
医学のルールで言えば、クラスで一番背の高い人、一番背の低い人は「異常」と判断されてしまう。

CTもMRIも患者にリスクを強いる検査(P125)

そのリスクを超える価値を見出さなければ、撮影するべきではない。

リビング・ウィルはいついかなる時でも撤回可能(P195)

口頭や目配せでも可能。決意を貫き通す必要はない。

*1:これは村上春樹作品によく出てくる表現で、この本で著者が実際に使っていたものです。著者も村上春樹ファンだそうなので(『1秒もムダに生きない』で言及)

*2:この記事の日付は2014年3月ですが、これは最初に読んだ時のもの。実際には2015年1月28日に書いています。ブログを書くにあたり、初読から時間が経っていたので再読しました

*3:著者によれば、7割程度自分で診られて、3割は専門医に、くらいがいい医師だそうです。全部自分で診ようとする医師も逆に危険

*4:これは著者自身がそうされているとか。知らないものを知らないと言えるお医者さんはいいな、と思って私が追加しました