毎日「ゴキゲン♪」の法則・暮らし編

「暮らし」をみがく読書日記。今の関心は健康的な食べ方、質のいい睡眠、時短家事です。

意外に制限がある「糖質制限」☆☆☆


さて、和田秀樹さんの宿題*1に自分なりの答を出すべく、糖質制限推進派の医師・江部康二氏の本を読んでみた。
公平になるよう、こちらもやや批判的な目で読んだことをお断りしておきます。

――やっぱり手放しで「素晴らしい!」とは言いにくい、と感じた。


◆目次◆
はじめに
第1章 主食をやめると、なぜ健康になるのか
第2章 糖質制限食、それは人類の健康食
第3章 糖質制限食でさまざまな病気・症状が改善する
第4章 糖質制限食でガンをどこまで防げるか
第5章 糖質制限食でおいしく食べて健康になる
第6章 【Q&A】糖質制限食の疑問と不安をスッキリ解消!
第7章 【体験談】1400の症例でわかった驚きの改善効果!
おわりに
巻末注
巻末付録1 献立づくりの工夫と春夏秋冬の特選メニュー
巻末付録2 食べてよい食品と避けるべき食品リスト


まず、著者の理論は以下の通り。
人間の体のエネルギー源として、2種類ある。

1.脂肪酸-ケトン体システム
2.ブドウ糖-グリコーゲンシステム(P48)

ケトン体というのは、脂肪酸代謝によって作られる物質。
グリコーゲンとは、肝臓と筋肉に貯えられているブドウ糖の集合体。
「脳はブドウ糖しか利用できない」と言われるが、実際には脳はブドウ糖とケトン体の2つをエネルギー源として使っているという。

著者によれば、人体は日常生活のエネルギー源として「脂肪酸-ケトン体システム」を使うようになっていて、「ブドウ糖-グリコーゲンシステム」はあくまで緊急事態のエネルギー源だという(P53)。このあたりは従来の説とは逆だ。

なぜなら、糖質制限食は「人類本来の食生活」だからだという(第2章にくわしい)。
体のしくみを考えれば、謎が解けるのだそうだ。

人類の歴史のうち農耕が始まる前の約700万年間は、食生活の中心は狩猟や採集でした。米や小麦などの穀物は手に入らなかったので、誰もが糖質制限食を実践していたと言えます(P74)。



私が読む前に疑問に思っていたのは3点。

  1. ケトン体が増えると問題はないのか?
  2. 糖質を制限して低血糖にならないのか?
  3. 糖質=穀物を制限するのに、なぜ穀物から作ったアルコールは大丈夫なのか?

まず、血中のケトン体が増加するリスクについては次のように書いてあった。

 断食や糖質制限食に伴う「生理的ケトン体産生の亢進」の場合は、インスリン作用の欠乏はなく、血液の緩衝作用もうまく働いていますから、何の問題もありません。例えば断食の初期は一時的にアシドーシス*2になりますが、緩衝作用で少しずつ正常な状態に戻っていきます(P67)。

これはあくまで、「インスリンが欠乏していない」ことが前提だ。
ということは、すでに糖尿病を発症している人が、独自に糖質制限ダイエットを始める場合にはリスクがある*3

2点目の「低血糖対策」は、体内で血糖が作られるので問題ないという。

…糖質は外部から摂らなくても大丈夫なのです。血糖が足りなくなる前に、肝臓内ではアミノ酸などからブドウ糖が新しく作られます(糖新生)。したがって、高血糖は改善されますが、低血糖になる心配はありません(P56)。


3点目は明快だった。著者が勧めているのは「蒸留酒」(焼酎など)や辛口のワイン(赤白どちらも糖質は低め)、あとは「糖質ゼロ」と明記されたアルコール類。蒸留酒は蒸留というプロセスで糖質がゼロになるそうだ。
つまり、世間で言われている「炭水化物を摂らなければアルコールは何でもOK」はやや拡大解釈なのだ。


ただ、やはり根拠となるのは論文であり、『本当は怖い「糖質制限」』の読書日記で書いた

データはただの数字であり、自分が証明したいものの裏付けとして引っぱってくるだけなので、極端な話、同じデータを正反対の根拠として使うことも可能

がその通りだったので驚いた。


糖質制限に、長期的には他のダイエットより著しく効果があるとは認められない」として引用されていた論文と同じと思われる実験データが引用されていたのだ。
手元に『本当は怖い「糖質制限」』がないので断言はできないが、比較対象が日本では珍しいものだったので覚えている。

『米国医師会雑誌』2007年3月号に記載された論文からの引用(P119)

  1. アトキンスダイエット(低炭水化物食)
  2. ゾーンダイエット(タンパク質・炭水化物・脂質の比率が40:30:30)
  3. ラーンダイエット(高炭水化物・低脂肪食)
  4. オーニッシュダイエット(炭水化物・タンパク質・脂質の比率が70:20:10)

この本では、「比較対象の3つのダイエットよりもアトキンスダイエット糖質制限ダイエットのひとつ)が体重を減少、善玉コレステロールを増やし、中性脂肪を減らすことが明らかとなった」としている。
掲載されたグラフを見ても有意差が認められる。

ところが、『本当は怖い糖質制限』では2年間の調査の結果について述べていたのに対し、この本では1年後の結果までしか掲載されていない*4のだ。


これでは、どれを信じていいのかわからない。この本でももちろん「久山町の悲劇」*5について触れられているし、そもそも、「脳はブドウ糖だけでなく、ケトン体もエネルギーとして使っている」「肝臓の糖新生があるから低血糖は起きない」といった体のシステムなどは一般人には真実かどうか判断することができない。極端な話、自分の体で実験するくらいのつもりでやってみるしかないのではないか。

では、そのやり方は?

この本では、糖質制限食には3つのやり方があるとしている*6

  1. スーパー糖質制限食――1日3食とも主食を抜く
  2. スタンダード糖質制限食――朝・夕の主食を抜く
  3. プチ糖質制限食――夕だけ主食を抜く

ダイエットやメタボ対策としては2~4週間「スーパー糖質制限食」を行い、目標値になったら夕食だけ主食なしにするプチに移行すればいい、とあった。
すでに糖尿病を発症している人の場合は、「スーパー糖質制限食」を続けることが必須となる。


この本では、OK/NG食品の一覧があったり、著者の勤務する高雄病院の栄養管理部が考えた春夏秋冬のメニューが載っていてとても実用的だが、これを実践するのは大変だ…とも感じる。

意外に食べられる範囲が狭いのだ。和食や中華は味つけに甘みがある=糖質を使っているのでNG。あんなどのとろみに使う片栗粉もダメ。

洋食ならデザートやパン、パスタを避ければ大丈夫かと思ったが、ソースがNGだという。小麦粉を使っているからだ。牛乳も意外に糖質が多いので小麦粉とダブルのグラタンはマカロニ以外でも×。デミグラスソースやケチャップも糖質が含まれるので避ける必要がある。


そうなると、「家族と違うメニューを考え、作るのに疲れた」主婦や、「お昼に何を食べたらいいのかわからない」サラリーマンが糖質制限を続けられなかった、というのもわかる。

お昼は選べるランチバイキングや、コンビニで糖質の少ないものを選べばいいとあるが、バイキングは値が張るし、たとえばコンビニのサラダを食べようとしてもポテトサラダやマカロニサラダが入っていて、糖質を避けるのはむずかしそうだ。

四季のメニューを見ると、主食を食べずにお腹を一杯にするには、結果的に野菜をたくさん使う必要があり、これを満たすのは作るにも、外で食べるにも簡単にはいかないだろう。
こういう理想的なメニューを続けられるならいい方法だが、実際には肉ばかり食べて偏って他の問題が起きる、という可能性はあると思う*7


これを試す価値があるのは、「とにかくアルコールが飲みたい人」だろう。
種類は何でもいいからアルコールが飲みたい、という人には夢のような方法ではないだろうか。
私はやりません。というか、無理です。甘いものはやめられないので。
この本によれば、「今より白米をたくさん食べていた昔の日本人に糖尿病がほとんどなかったのは、運動量が10倍くらいあったから」だそうで、だったら運動する方を選ぶ。


現代の食生活を続けているとインスリンの分泌過多になり、膵臓に負担がかかった結果糖尿病になる、というメカニズムはよくわかったので、膵臓を酷使しない生活を心がけようと思う。
和田秀樹さんが書かれていた「タイム・ニュートリション」や、糖質を摂りすぎないゆるい制限方法などがより現実的なやり方だと思う。


合う合わないの個人差が非常に大きいと思われる方法。
試してみたい方には、この本は理論から食べていい食品一覧、メニューと幅広く網羅されているので、最初に読むのにいい本だと思います。
私のアクション:夕食のご飯は控えめに

関連記事
読書日記:『本当は怖い「糖質制限」』
「久山町の悲劇」の真実とは


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

炭水化物=糖質+食物繊維(P21)

食物繊維は体内に吸収されないので、カロリーゼロで、血糖値も上げない。カウントすべきは糖質のみ。

ブドウ糖スパイク(P25)

空腹時血糖と食後血糖の差が大きいことを言う。この差が大きいほど体内の血管内皮が傷つけられ、将来の動脈硬化心筋梗塞のリスクになる。

正常な人でも白米や白いパンなど精製された炭水化物を1人前食べると、食後血糖値が急上昇する。著者はこれを「ブドウ糖ミニスパイク」と呼んでいる。

1日に何回も糖質を摂ると、そのたびにミニスパイクが起きる。そして、ミニスパイクのたびにインスリンが大量に追加分泌されて、代謝が乱れる。

ふだん食べている白米や白いパンを玄米や全粒粉のパンに置き換えるだけで、糖尿病の発症リスクを減らせる(P41)

バナナ以外の果物は血糖値をそれほど上げない(P159)

果物に含まれる糖質は果糖・ショ糖・ブドウ糖・糖アルコールなど。
果物によって割合は異なるが、果糖は10%くらいしかブドウ糖に変わらないので、ほとんど血糖値を上げない。
果物の糖質のうち半分が果糖と仮定すれば、穀物の糖質に比べると血糖値は上がりにくい。
100g程度食べる分には心配なし。

*1:くわしくはこちらの記事の冒頭にあります→糖尿病専門医が警鐘を鳴らす、「糖質制限」の問題点

*2:本書内に説明があったかもしれませんが、うまく拾えなかったのでメルクマニュアル医学百科家庭版より→“アシドーシスは血液の酸性度が高くなりすぎた状態”です

*3:経口血糖降下剤内服、インスリン注射をしている人は低血糖を起こす可能性があるため、主治医と相談することを勧めています

*4:『本当は怖い糖質制限』でも、短期的(確か、記述では6ヶ月後)には有意差ありと認めていました

*5九州大学の担当教授は「栄養指導」などの介入はしていない、と発言されています

*6:前述の場合以外にも、「腎障害、活動性すい炎、肝硬変のある人には糖質制限食は適していない」とされています

*7:おやつにチーズやハム・ソーセージばかり食べていたら塩分過多になりそうだし