先日読んだ『「思秋期」の生き方』の著者、和田秀樹さんの本。老化に関する本をたくさん出されていることを知り、興味があったので借りて読んでみた。
とても中身の濃い、いい本だった。
◆目次◆
まえがき
第1章 老化とは何か
第2章 メタボのウソ
第3章 クロード・ショーシャ博士のアンチエイジングメソッド
第4章 心の若返りの意味
第5章 がまんは老化の元
第6章 日本人はなぜ若返ったのか?
『思秋期の生き方』では、「がまん」は主に人間関係に関しての話だったので、そのテーマを掘り下げたものかと思って読み始めたが、“「がまんが美徳」とされる日本人は、実は食べものも、楽しみもがまんしすぎではないか”というのが、この本全体を通して和田さんが伝えたいことだ。
簡単に言えば、快楽は脳を若々しく保つことにもなるし、美味しいと思うもの、食べたいと思うものが体に必要な栄養を含む*1ので、無理に制限するのは逆効果なのだそうだ。
がまん型の生活をしていると食事も質素になりがちだ。食事に興味を失い、ないがしろにしていると肉体的にも精神的にも人間を老化させてしまう。真面目すぎる日本人の場合、空腹、痛みから性欲までがまんは美徳であり、年相応に健康的と思われているようだが、これは迷信と言っていい。
節制と食事をおろそかにすることは違う(P98)。
減らすことが何でもいいように今まで思ってきたので、それは間違いだという主張に愕然とするが、さまざまな研究結果をデータとともに紹介されていると、あながち嘘ではない気がしてくる。
個人的な体験だが、人生で断食1回、食事量をかなり減らすダイエット1回、食べるものの内容を大きく変えるダイエット1回*2をやったことがあり、他に粗食を続けた時期も長かった。いずれも本を熟読し、その方法をきちんと守ってやったものだ(断食は自宅でするためのサプリメントなどを購入)。
少し前に検証してみたところ、アトピーも、その前に大きい病気をしたのも、うつになったのも全部その後だったのだ*3。
いつも極端に体重が減って実家に帰り、母親に「何でも食べなさい!」と怒られて出されるものを食べているうちに健康を回復する、というのがパターンだった。
私にとっては、とても説得力のある説だった。
さらに、最近読んだ宮本慎也さんの『意識力』*4や『本当は怖い「糖質制限」』*5と共通する点もある。
ダイエットを一生懸命やった結果、老化を促進しているとしたら、こんなバカな話はない。
ここでは主に栄養のことばかり書いたが、精神科医らしく「心の老化」を防ぐ、という点から気をつけるべきことを書いてある。まんべんなくさまざまなことに触れてあるので、この本1冊読めば、必要なことはほぼ網羅できると思う。
『思秋期の生き方』よりも2年ほど前に出た本だが、だいたい同じことに言及してあり、この本の方がよりくわしく書いてあることもある*6。
もし『思秋期の生き方』が図書館で何十人待ちなら、この本を借りてみることをおすすめします。
私のアクション:コレステロール値を気にしすぎない
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読書日記:『「思秋期」の生き方』
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
注)かなり自分の言葉で要約しています
感情が老化する要因3(P41)
1.前頭葉の萎縮
萎縮すると意欲が失われる→いわゆる「枯れた」老人に
2.動脈硬化(年を取るほど進む)
脳の動脈硬化が進むと、自発性が低下
3.セロトニンなど脳内の神経伝達物質が減少
セロトニンの減少により、意欲が低下、うつになりやすくなる
「心の老化」によって自殺リスクが上昇(P43)
心を若々しく保っておかなければ、身体的な老化が起こりやすいことに加えて、自殺という死因が増える。
世界中の統計でBMI25程度がいちばん長生き(P57)
・アメリカの国民健康栄養調査(2006年、29年の追跡調査)→いちばん長生きなのは「太り気味」のBMI25~29.9
・日本のある調査(2009年)→40歳時点の平均余命が最も長かったのは男女ともBMI25~30
もっとも短いBMI18.5未満との平均余命の差は約7年
日本人はもっと肉を食べてよい(P65)
近年、日本人の肉の摂取力は1日あたり80g前後。アメリカ人は約300g、ヨーロッパ人は約220g。
そもそも前提となっている肉の摂取量が極端に違うのだから、減らせばいいというものではない。
コレステロールは下げないと危険なのか(P66)
70歳の高齢者を対象に追跡調査した「小金井研究」によると、いちばん死亡率が高かったのは、コレステロール値が169未満の低いグループだった。ついで正常値とされるグループ、最も長生きするのは男性では219まで、女性は220~249の正常よりやや高めのグループだったことが判明。
コレステロール値が高い人の方が、うつになりにくい(P68)
著者の経験値だが、コレステロール値が高い人は回復しやすいし、低い人はなかなかよくならない。また、高い人の方が、うつにもなりにくいようだ。
「ガンで死ぬ国」ならではの健康法を考える(P80)
・免疫機能を高く保つには精神的な健康が重要
・コレステロールの摂らなさすぎも悪影響
・出来損ないの細胞を作らないためにフリーラジカルをなるべく増やさない、酸化を促進するようなことをできるだけ避ける
・細胞に障害を与えるタバコは吸わない
・紫外線もできるだけ浴びない
骨粗鬆症にも注意(P81)
日本は骨粗鬆症が多い国でもある。土壌にカルシウムが少ないため、水や野菜に含まれる量も少ないのが理由だと言われている。
牛乳をたくさん飲むなど、カルシウム摂取量を増やすことを考える。
「何でも低い方がいい」常識を疑う(P90)
血糖値は低い方がいいとか、コレステロール値も低ければいいといったこれまでの常識は、高齢者の多い社会では変わってくる。低カロリーで低栄養だと老けてしまうし、何ごとにも低い方がいい、寡少な方がいいという素朴な信仰はそろそろ捨てるべき。
メタボ対策をすると神経伝達物質は減少する(P94)
動脈硬化の予防に限らず、メタボ対策にどのくらいの有効性があるかはまだはっきりしない部分がある。ただ、メタボ対策を徹底すると、まず確実に神経伝達物質が少なくなることは考慮しなくてはならない。結果、うつになりやすく老化も進みやすい。
「食べない型ダイエット」では老化が進む(P102)
当然、なにがしかが不足した状態になるから、TCAサイクル(酸素を使って栄養素を分解し、エネルギーを生む代謝回路)…の回りが悪くなる。
エネルギーを作り出せないし、脂肪もうまく燃焼しない。つまり細胞や分子のレベルから、老化した体になってしまうことを意味している。
会席料理の順番がベスト(P123)
日本の会席風の料理なら、魚介などタンパク質の食材を使った先付が出て、刺身、焼き物と続く。油を使った揚げ物が出されるとしたらそのあとだ。タンパク質から取ることになるので、血糖値は緩やかに上昇する。最初からインスリンを大量分泌させたりしないので、揚げ物が出てくる頃にはかなりの満腹感がある。
締めで軽くご飯を食べて、最後にデザートとして果物が出るという、タイムリー・ニュートリションの理論に適合する賢い食べ方だったのだ。
神経細胞レベルからの、うつ病を早期発見する重要性(P158)
神経細胞は、神経突起によってお互いがつながっているのだが、ストレス状況下でこの神経突起が短くなった結果がうつである、というのが現在の脳科学の考え方である。神経突起が健康な時よりも短くなって、神経と神経のつながりが悪くなる。うつを放っておくと、どんどん短くなってきて、修復不能になる危険が高まる。
うつ症状のあった人が、あとからがんになるケースは多い(P162)
心や前頭葉を若く保つことは、うつの予防である以上に、免疫機能に影響する。心が幸せな状態を維持することは、免疫機能を保つために重要なポイント。
美味しいものの方が、体も心も老化させない(P192)
人間が「美味しい」と感じるのは、甘いもの、脂肪分、うまみ成分=アミノ酸である。自分の体に必要なものは美味しく感じるように、生物進化の過程でできあがっている。
高齢者は薄味よりは濃い味の方が好きになるが、その原因は動脈硬化。
壁が厚くなり、通路も狭くなると、血圧が少し高めでないと酸素が脳に行かない、血糖値が少し高めでないと糖分が脳に行きにくくなる。
当然、血圧や血糖値を高めにしておくことを体が求めるから、前と比べて甘いものが好きになったり、塩辛いものを食べて血圧を上げようといったことが起こる。加齢とともに血圧や血糖値が少しずつ上がるのは、適応現象であるという見方がある。
塩分も、加齢によってナトリウム貯蓄機能が衰えるために排出される塩分が多くなると、低ナトリウム血症になりやすい。
年を取ってからは、何かと足りないことの害が出やすい
血圧も血糖値も下げすぎの方が怖い(P201)
「足りない」ことは「余っている」よりも悪いと述べたが、血圧や血糖値といった数値も、高いよりも低すぎる方が危険度は高い。
アンチエイジングと健康の本当の第一歩は、「体重は減らした方がいい」「何でも低い方が健康によさそうだ」など、素朴な概念から抜け出すこと。
健康に悪影響のないアルコールの量(P206)
ショーシャ博士はワインでハーフボトル(360ml)までは大丈夫だという。日本酒も2合、ビールで大瓶1本程度だ。日本人は少し酒に弱いから、その半分としても、このくらいの量なら、老化には悪影響はないようだ。