あまり大きな声では言えないが、身内にちょっと不安な高齢者がいる。
祖父が晩年、社会的にタブーなことを人前で口走るという、悪ガキのような状態になって親戚一同青ざめたことがある(それでも認知症ではありませんでした)。
言ってはいけないことを言う、というのは社会的な脳が衰えているからだ、とその後何かで読んだ。それが「前頭葉」という部位なのだということも。
その記憶を拠りどころに、不安な人物について「前頭葉が衰えてるねんで」と別の身内と言い合っていたところ、和田秀樹さんの『「思秋期」の生き方 45歳を過ぎたら「がまん」しないほうがいい』に筋力や記憶力より、感情の老化(=前頭葉の老化)が怖い、とあったのでやっぱり、と思った。
その後、この本も書かれていることを知り、これは読んでおかなければ、と思ってさっそく借りて読んでみた。
自分のためにと思って読んだわけではないのだが、充分自分も老化予防が必要な対象に入っておりました。
◆目次◆
感情老化度テスト
まえがき
序章 「感情の老化」とは何か?――人間の脳は「前頭葉」から縮み始める
1章 何もやる気にならない人、何でも心から楽しめる人
2章 いつもイライラしている人、のんびりと心静かな人
3章 落ち込んだら長い人、パッと切り替えのできる人
4章 物忘れのひどい人、記憶力が衰えない人
5章 年を取ることが不安で仕方ない人、年を取っても気楽に生きられる人
冒頭に「感情老化度テスト」というのがある。やってみるとけっこう当てはまる。
和田さんによれば、前頭葉は40代から萎縮(=老化)が始まるという。アンチエイジングは20代でも早すぎることはないそうだが、感情のアンチエイジングも早ければ早い方がよさそうだ。
「気持ちの若い人」と「気持ちの老化が始まっている人」の違いはどこから来るのか。
先に読んだ『「思秋期」の生き方』や『「がまん」するから老化する』とも重なる部分は多いが、やはり「欲」は大きいという。気持ちが老化して何もする気がしなくなると、うつになったり体も老化が進んでしまうので注意が必要だ。
少しでも、好きなことや興味のあることを遠慮せずにやるのが大切だとか。
また、だんだんと「気持ちの切り替え」がうまくいかなくなるのだそうだ。これは、高齢者になって突然起きるものではなく、40代くらいから少しずつ始まるものらしい。
そこで、気持ちの切り替えが下手になったと感じたら、自分だけの儀式のようなものでもいいので、いったんリセットするのがいいそうだ。
落ち込んだら長引きやすくなるのも特徴で、放っておくとうつになることも。落ち込んだままにならないために和田さんが勧めているのが、「落ち込んだ時は絶対に反省しないこと」。
有頂天の時に歯止めをかけるために反省するのはいいが、すでに落ち込んでいるのに反省などすると、さらに落ち込んでしまって浮上のきっかけがつかめなくなる。
さらに、残念ながら人は年を取るごとに回復力が落ちていく。つまり、疲れやすくなるのだ。40を過ぎたら、意識してこまめに休息を取った方が前頭葉のためにもいいそうだ。
いつまでも柔軟性の高い心を保つためのヒントがたくさんあります。ぜひどんな心がけをすればいいのか読んで、早めに備えてください。
私のアクション:落ち込んだ時には反省しない
関連記事
読書日記:『「がまん」するから老化する』
読書日記:『「思秋期」の生き方』
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
感情にも「保続」がある(P24)
※保続とは…同じことを繰り返してしまう状態。
認知症の患者に「あなたのお誕生日はいつですか?」と聞くと「大正○○年××月△△日です」と答えられたとする。次に「どこで生まれましたか?」と聞いても「大正○○年××月△△日です」と答える。質問が変わっても、同じ答を繰り返してしまう。
ある考えや答えが出た時に、そこからスイッチが切り替わらなくなる。だから答が変えられない。これが「保続」。
怒った時に怒りがなかなか収まらない、悲しくなったり、うつのようになった時にそこから抜け出せないのは、感情にも保続が起きていると考えられる。つまり感情の切り替えスイッチが悪くなっているのだ。
頭も使わないと衰える。しかも、年を取るほど落ち方は大きくなる(P39)
――ということは、運動機能やIQは低下していなくても、意欲や自発性、その原動力となる好奇心など「感情が老化」してしまって、年を取っているのに体を動かさない生活とか、頭を使わない生活をしてしまうと、いよいよ本当に運動機能やIQまでが衰えていく可能性が高い。
欲望は抑え込みすぎない(P48)
欲望とは本質的には、生きるための原動力である。年を取ったからといって、それをことさら抑え込んではいけない。いたずらに抑え込むと「何もやる気にならない、何をやってもつまらない」といった人間になってしまう。
逆に前頭葉をしっかり働かせて、欲望をコントロールすることができれば、いくつになっても「何でも楽しめる人」でいることができる。
「ニンテンドーDS」をしても、「行動」に移さなければ意味がない(P57)
実際、「DS」にしても、音読や百ます計算にの簡単な計算にしても、脳の血流量を増やして前頭葉を活性化する一定の効果は期待できる。ただし、それで満足していては意味がない。
(中略)
前頭葉を刺激したら、その後、「行動」に移さないと感情の老化には、あまり役に立たない。DSで「あなたの脳年齢は10代です」と言われることが目標になってはいけない。
(中略)
「何ごとにも億劫だった人間がアクティブになって、旅行に行く気になった」「資格にチャレンジする気になった」「定年後、起業する気になった」という「行動レベル」まで進んで、はじめて効果的に感情の老化が防げる。
「年甲斐もない」は最高のほめ言葉である(P73)
「年だから」という理由で、諦めたり止めたりしないといけないものはないのだ。
落ち込んだ時にパッと切り替えるための習慣を作る(P81)
たとえば、仕事に集中できない時には、気分転換で行く喫茶店を見つけておくとか、疲れてやる気が出ない時は、必ず焼き肉を食べるといった、「儀式」的な行為が有効だ。それをきっかけにして、悪循環を断つ。
EQの要素5(P88)
※EQ提唱者ピーター・サロヴェイ教授/ジョン・メイヤー教授による
1.自分の感情を知る
2.自分の感情がコントロールできる
3.自分を動機づける
4.他人の感情を認識する
5.人間関係をうまく処理する
のんびりと心静かな人=EQの高い人(P103)
ささいなことですぐに大騒ぎするような人がいる一方で、多少のトラブルがあってもあわてず騒がず、淡々と処理のできる人がいる。
こうした感情の抑制が利いていて、のんびりと心静かな人は、一見、老成しているように見える。しかし、実際はEQが高くて感情が若いのだ。
事態が変化した時にあわてないのは、心がフレキシブルな証拠である。そしてこのフレキシブルさこそ、前頭葉機能のもっとも大きなポイントだ。前頭葉が若い人は、変化を苦にせず対応できる。
怒りの感情を持つことと、怒りの感じ感情に翻弄されることはまったく違う(P122)
激情に流されるままに振る舞うのは若いというより、むしろ未熟な脳、あるいは老化して機能が低下した脳だ。
切り替えが下手な人は「保続」現象が起きている(P128)
切り替えが下手だと自覚しているなら、行動の間、間に何かを挟み込む習慣をつけるとよい。間に別なことを入れていったんリセットしてしまうのだ。これは自分だけの儀式のようなことで構わない。
落ち込んだ時は「絶対に反省しない」と決めておく(P133)
調子がいい時、有頂天の時こそ自省は必要だが、落ち込んで「負の悪循環」にある時に反省する必要などないのだ。
落ち込んだ時は「できること」から(P134)
落ち込んでいると感じる時は、事務作業でも家事でも、簡単にできることをするようにする。新しいことやむずかしいこと、苦手なことは後回しにする。そうして「自分はできる」「大丈夫だ」ということを再確認していくのだ。
休息は、意識してこまめに取る(P139)
疲労している時は気持ちも消沈している。だからこそ「負の悪循環」に陥りやすい。感情のコントロールが悪くなってイライラするのも、同じように疲労との関係は深い。
イライラ、カリカリしてきたり疲れを感じた時は、意識して休息を取るのが賢明である。肉体的な疲労の場合、1日休息を取るだけで、すっかり回復することも多いのだ。しかも中高年になって、着実に脳も老化している。肉体が疲れやすいのと同じように、脳も休息を必要としているのである。
本やテレビで知ったことは「受け売り」で話す(P167)
「受け売り」であってもバカにはできない。一通りは理解して覚えておかないと、人に話すことはできない。それも本に書いてある通りや、ビデオを再生するようには喋れないわけだから、自分なりに理解して、構成しながら話すことになる。
これは、一番簡単な復習法なのだ。人に話すことで、自分の理解や記憶が甘いところが明らかになれば、もう一度本やビデオに当たることになる。こうなれば…エピソード記憶として定着しやすい。
役に立つ老人として認めてもらうには(P172)
若い人に勝てるのは「金」「知識」「人生経験」になる。
お金で勝負するのか、知識や賢さで勝負するのか、人生経験を生かして相談相手になるのか。
自分の得意分野を意識してひとつは確保する。