近藤誠さんは、言わずとしれた『患者よ、がんと闘うな』の著者。元・慶應義塾大学医学部専任講師*3。
著者の本は何冊か読んでいて、たぶん本当なんだろうけど何となく“あれもダメ、これもダメ”と現代医療のことを全力で否定する怖い人のようなイメージがあった。
でも、読んでみたら意外にふつうだった。この「ふつう」ができないのが、現代のむずかしさなんだろう。
◆目次◆
第1章 どんなときに病院に行くべきか
第2章 患者よ、病気と闘うな
第3章 検診・治療の真っ赤なウソ
第4章 100歳まで元気に生きる「食」の心得
第5章 100歳まで元気に生きる「暮らし」の心得
第6章 死が恐くなくなる老い方
おそらく、著者の言いたいことはここに集約されると思う。
今は、調べようと思えば書籍でもインターネットでも、いくらでも情報が手に入る、いい時代です。今まで「病気のことは医者を信じてお任せ」だった方も、ここで発想を変えて「医者を疑い、自分で調べて考える」癖を身につけてください(P14)。
医者に言われるままに薬を飲んだり、手術を受けたりしては危険ですよ、ということだ。
きちんと正しい知識を自分で探し、自分で決められるようになることが目標だろう。
専門のがんのことについては、今までの本で繰り返し書かれている内容とほぼ同じだと思う。
“がんもどき”は切っても切らなくても一緒だから切るな。
がんが発見された時は、すでに転移もしているから、手術しても手遅れ。
痛みのコントロールをしっかりして、QOLを下げずに人生をまっとうした方がよい*4。
恐ろしいのは、がんで亡くなったとされる人のうち、実は手術の失敗や抗がん剤によるものもあるし、術後のQOLが下がって結局寿命を縮めてしまうケースもあるということ。
最近は「予防医学」も叫ばれているが、著者に言わせればこれも「医者が儲かるためのからくり」なのだそうだ。
医者に頼らないためには、正しい知識を得て、自衛するしかない。
というわけで、この本の後半は自衛するための方法が紹介されている。
これが実にまっとうなことしか書いてないのだ。拍子抜けした。
早寝早起き、バランスのよい食事に勝るものなし(P158)
あとは「ほどよい運動」。当たり前のことばかりですね。
減塩と心臓病の発症リスクに相関関係はないとか、体重やコレステロールを減らさない食生活をした方が長生きできるなど、驚くようなことも書いてある(もちろん、論文などの根拠が示されています)。
著者自身の経験として、がんになった人が食事療法をした結果、命を縮めているケースも多いと感じられているそうだ。
心得27 体重、コレステロールを「減らさない」健康法を選ぶ
僕の外来に来る患者さんの中に、「がんは治療しても意味がないことがわかったから、その代わり……」と、自分で見つけてきた食事療法に熱中する人がいます。
食事療法というものは、たいてい「摂取カロリーを減らす」「肉を食べない」「玄米と野菜しか食べない」など、ないない尽くしで、一気にやせてしまう。
自分から食事療法に取り組もうという人は、すべてに一生懸命なので、食事療法の決まりをきっちり守ってガクッとやせます。すると、体の抵抗力が落ちて、がん細胞が信じられない増殖の仕方をして亡くなってしまう。
(中略)
…コレステロールが減ると細胞膜がもろくなり、正常細胞の集合体である正常組織も弱くなって、がん細胞の増大・侵入を許してしまうわけです(P141-2)。
もちろん、断食してよくなった人や、食事療法が合う人もいると思うので、一概には言えないが。
情報をきちんと自力で得て、自分で納得して判断することの重要性を感じた。
もちろん、この本も読んだ上で「それでもがん検診を受ける」というのも選択としてあると思う。
最終章のリビングウィルの問題も含め、判断材料のひとつとして、ぜひ読んでみてください。
私のアクション:できるだけ早起き生活をする
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。
一度に3種類以上の薬を出す医者を信用するな(P69)
5種類以上を一度に飲むような行為は極めて危険。
ステーキでもとろでもいくらでも、おいしいと思うものを何でも食べて、少し太った方が長生きする(P143)
アルコールを「百薬の長」にする目安(P151)
1日にビールならロング缶1~2本、日本酒なら1~2合、ワインならグラス2~3杯、焼酎ならお湯割りで2~3杯。
「減塩で長生き」は嘘(P162)
1998年発表の国際共同調査「インターソルト・スタディ」では32か国52の地域で、約1万人の食塩摂取量と血圧を調査した。結論は、未開地を除く48の地域で、「食塩の摂取量と高血圧症の間にはっきりした関係は認められなかった」。