毎日「ゴキゲン♪」の法則・暮らし編

「暮らし」をみがく読書日記。今の関心は健康的な食べ方、質のいい睡眠、時短家事です。

糖尿病専門医が警鐘を鳴らす、「糖質制限」の問題点☆☆☆


家族が借りてきた本。私にとってはとてもタイムリーだった。

先日読んだ『「思秋期」の生き方 45歳を過ぎたら「がまん」しないほうがいい』で、著者の和田秀樹さんが「健康に関するさまざまな情報に価値があるかどうか、自分で判断できるリテラシーが大切」と(いう意味合いのことを)書かれていた。そして、糖質制限ダイエットに関するある情報を提示し、その是非については書かず「考えてみてください」とだけあったのだ。

まるで宿題を出されたような気分だったので、ありがたく読んでみた。


◆目次◆
第1章 糖質制限はやめなさい!
第2章 肥満のメカニズム
第3章 糖質制限が病気をつくる
第4章 医師がすすめる正しいダイエット
第5章 ダイエット効果を高める行動療法

個人的には、バランスよく何でも食べるのが一番調子がいいというのが今の結論なので、「何かだけを食べる」や「何かを食べない・極端に減らす」方法は眉ツバだと思っている*1
アトキンスダイエットが流行った時も何だかなあと思っていたが、ネットなどで見る情報では「これで大丈夫なの?」というものがさらに多い印象*2


糖尿病専門医である著者も、やはり疑問を感じていたようで、さまざまな論文を引用して、問題点をあぶり出していく。
著者の本は以前『糖尿病最新療法―インスリン注射も食事制限もいらない』を読んで、非常にバランス感覚のいい人だと感じたので、著者の本なら信頼できそうだ、と思って読んだ。


ところが、アマゾンのレビューでは酷評されている。その多くは糖質制限実践者と思われるが、科学的根拠がない、引用されている論文に問題があるなどの指摘が多い。
なので、どこに問題があるとされるのか、やや厳しめの目で読んでみた*3

まあ、データはただの数字であり、自分が証明したいものの裏付けとして引っぱってくるだけなので、極端な話、同じデータを正反対の根拠として使うことも可能*4


やや疑い深い目で読んだ結果、この本で言えるのは

  • 血糖コントロールを厳密にやりすぎると、かえって健康を害するリスクが増える
  • 糖質制限を行うと、必要な微量栄養素が不足しやすい
  • 炭水化物を制限すると、うつになりやすい(セロトニンの材料となるトリプトファンは動物性タンパク質から摂れるが、それだけではセロトニンが不足するという研究結果あり)
  • 糖質制限は、短期(半年程度)的には体重を低下させる働きがあるが、長期(研究では2年)になると総カロリー制限など、他のダイエットとの有意差はなくなる

だと思う。


問題かなと感じたのは、「低血糖によるリスク」と「糖質制限のリスク」をイコールとして書いてある点。低血糖になるのは糖質制限だけとは限らないし*5糖質制限をする場合でも低血糖発作を起こさない対策は何かあるのではないか。また、「糖質制限で○○になる」とさまざまな病気の名称を挙げているが、そこまで断言できるのかは一部疑問が残る。


著者はこの本を、現在糖尿病の人だけではなく、ダイエットとして糖質制限をやろうとしている人にも注意を促したいという目的で書いたそうだ。
やるなら

  • 専門家の指導で*6
  • 短期間にとどめる(長期的なエビデンスがまだないため)

が望ましい、としている。
ダイエットとしてやろうと気軽に考えている人ほどひとりでやることになるので、注意が必要かもしれない。

確かに、長期的に見ると

  • 他のコントロール法と結果に差が出ず
  • どの程度リスクがあるかはっきりしていない

のであれば、「それでも糖質制限を選ぶ」という理由がないことになる。


第4章・第5章では、じゃあ糖質制限の代わりに何をすればいいのか、という代案が提示されている。
著者はご自分のクリニックで「地中海式ダイエット」を基本にした食事の指導をされているそうだ。
さらに、「行動療法」も導入されていて、その方法も紹介されている。

1日1600キロカロリーに抑え、1日15分のウォーキングを行う。体重・血圧・血糖値を毎日記録し、それをもとに診察日に検証する。
「評価」と「報酬」を意識して行うことで、コントロールがうまく行くケースが多いそうだ。
一般的な糖尿病の制限に比べると、ずいぶんゆるい印象だ。


糖質制限の理論を読んでいないのでまだ断言はできないが、私のように「何かだけを食べる」や「何かを食べない・極端に減らす」が何となく苦手、という方はこの本を読んで「地中海式ダイエット」や「行動療法」について知るのもいいと思う。
ただし、紹介されているのは「地中海式ダイエット」の概論であり、具体的なメニューなどはないので、興味のある方は別の本も読む必要があります*7
私のアクション:糖質制限について、推進派の意見も読んでみる
関連記事
読書日記:『インスリン注射も食事制限もいらない 糖尿病最新療法(角川SSC新書)』

アトキンスダイエットで微量栄養素が大幅に減少する(P28)

アトキンスダイエット糖質制限ダイエットの一種
2010年。スタンフォード大学ガードナー博士の研究から
被験者は25~30歳の女性で、BMI指数は25~40、期間は8週間
アトキンスダイエットを行った人たちは、推定平均必要量に対し、ビタミンB1は約51%、葉酸は約55%、ビタミンCは約52%、鉄は約32%の人たちがその域に達していなかった。
(中略)
アトキンスダイエットは、典型的な糖質制限食なので、パンや穀物に含まれるビタミンB1、葉酸、鉄という重要な微量栄養素が不足するのはわかりやすい話。また、果物も制限されるので、ビタミンCも不足する。

HbA1cは何%がよいのか(P40)

※2010年1月「ランセット」誌に発表された、カーディフ大学(イギリス)クレイグ・カリー博士らの研究による
4万8000人の糖尿病患者のデータを解析し、HbA1cと死亡率の関係を調べている。
死亡率が最も低くなるのはHbA1cが7.5%。同7.5%と比較して、同6.4%では死亡率は52%上昇、同11.0%では79%上昇。

*1:少なくとも、自分には合わないだろうな、と思います。友人に断食で体調がよくなった人もいるので、この辺は個人差が非常に大きいと感じます

*2:「糖質制限」の理論はこれから読みますが、「炭水化物さえ摂らなければアルコールもOK」というのがうさん臭い、と思ってしまいます

*3:具体的には根拠として問題がないか、論理に飛躍がないか

*4:この本でも、「糖質制限が正しいという根拠」にたびたび挙げられる、ある疫学調査の結果が使われています。データではありませんが

*5:厳格に制限すれば「総カロリー制限」などでも可能性はある

*6:まだ明確なガイダンスがないので、現在は医師によって微妙にやり方が違うことも問題点として挙げられていました

*7:参考文献としてあげられていたのは松生恒夫著『「地中海式和食」のすすめ (講談社+α新書)』でした